技能実習制度に対する「違反件数」の発表について②

今回の記事は、本日は今年の8月27日に発表された

「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和2年)」
について

①違反に対する概要について
②違反詳細について

と、最後の詳細の②の部分について書いてみたいと思います。
①の概要について過去記事のコチラをご参照下さい

目次

1.令和2年の監督指導の状況
2.実際の事例紹介
3.技能実習生を受入れに対する注意点

令和2年の監督指導の状況

公開されているデータのソースはコチラとなります

これは毎年、管理監督元である厚生労働省より発表されています。

厚生労働省の傘下機関である「外国人技能実習機構」より、技能実習生の受入先である「実習実施者」に対して、3年に1回以上にて監査が行われています。 監査は抜き打ちで行われる事もあります。
その中で違反率の数値がマスメディア等にて大々的に報道がされていました。
その報道がされた「違反率」は70%を超えており、かなり批判的な報道があったのは事実です。


違反事項に対する内訳で目立つのが・・・・

  1. 安全基準 24.3%
  2. 労働時間 15.7%
  3. 残業等の割り増し賃金の支払い 15.5%......etc

となっております。

違反項目の内訳として、一番多いのがやはり労働災害を誘発しかねない「安全基準」に対しての違反が目立ちます。ただ、これは外国人を雇用している事業所だけでなく、私たち日本人労働者のみ雇用を行っていない事業所でもなかなか減らない違反項目となります。

次に多いのが、「労働時間」の項目ですが、この多くは法定労働時間を超えた長時間労働に対する違反となります。
技能実習生はあくまでも”労働者”ではなく、技術を学ぶ ”インタ-ン” となります。 しかし、彼らは労働基準法によって権利を得ている”労働者”の待遇で雇用契約が発生します(過去の技能実習生は労基法から除外された待遇であった)
よって、法定労働時間を超える事は出来ません。
ただ、事業所によっては繁忙期における貴重な就労人材となってしまったり、また技能実習生側が「少しでも稼ぎたい」と言う思いが合わさって労働時間が規定オーバ-となってしまう事象も見受けられます。

そして3番目に多いのが、「割り増し賃金の不払い」の問題です。
意図的に残業等の割り増し賃金の支払いを行わない事はあってはいけない事ですが、国ごとにおける労働習慣の違いにより労働者側と雇用主側で問題となってします事もある様です。 次にご紹介する事例の部分で触れていきます。

実際の事例紹介

少し興味深いと思われた事例についてご紹介していきます

事例1  安全基準の違反

(概要)
機械器具を製造する事業場に対して立入調査を実施したところ、技能実習生も使用する
ベルトサンダー(金属を研磨するための機械)について身体が巻き込まれるおそれがある
ローラーの箇所に覆い等が設けられておらず、天井クレーンについても法定点検が実施さ
れていなかった。また、玉掛用具として使用する繊維ベルトにも著しい損傷が認められた。

事例2 残業等の割り増し賃金の支払い

(概要)
縫製業の事業場で働く技能実習生から「労働時間が短く集計されている」との申告がな
され、所轄労基署が調査を実施したところ、始業前の20分間に清掃を行わせていたにもかかわ
らず、この時間を労働時間として算入していない状況が認められた

事例1の違反項目については、一番多い「安全基準」に対しての違反でありますが、中々減らない違反でもあります。
技能実習生を受入れを行っている事業者に対しては、管理監督元である省庁より定期的な監査がある為、技能実習生の受入れを行っていない事業所と比較して、違反事項がより明るみに出やすい側面もあります。

事例2については、日本で少し早い目に出社を行う事が美徳の様に行われていた労働習慣があり、これは外国ではあまり見掛けない労働習慣であり、これは文化の違いです。
ただ、日本でも過去の労働裁判の事例にて会社側が従業員に対して「早い目の出社を促す」行為は業務指示としてみなされた事もあります。

技能実習生を受入れに対する注意点

弊協同組合が取引きをおこなっている「インドネシア」と言う国は、他民族・他宗教・多文化・多言語......etcとなっており、彼らの会話の中には「〇〇出身の人に対してはこれが必要」、「○○さんは宗教が異なるので、この配慮が必要だよね??」等、日本では中々聞くことが出来ない会話が日常的に聞ける事があります。

反面、私たちは島国として四方を海に囲まれ、なかなか多文化や異民族と触れ合う機会が少なかったと思います。
よって、それをベースとした同質性の傾向により、以心伝心の文化が存在します。

技能実習生や新たに創設された特定技能制度を利用して、外国人労働者の受入れの際は、雇用契約書や雇用条件を詳細にし、実習生たちに対して言語として確実に伝えていく事が重要なポイントとなります。
あくまでも外国人である彼らは日本語は学んでいるが、日本語はネイティブレベルの話者ではないと言うことです。これは、私、宮崎もインドネシアで生活していた時に相手に対して的確にコチラの意図を「言語」で伝える事が出来なくて、とても苦労した経験があります。

そして最後に重要なのが、「訪日前に外国のエージェントに支払った手数料」と言う名の借金問題も念頭にいれておく必要があります。 
彼らは労働災害等による怪我で、継続的な就労が出来ない事で無報酬になる事を過度に恐れる事もあり、一方、事業者側も「労働災害」となれば元請けよりペナルティ-もあるので一旦労使双方の合意で収めたが、結果的に所轄庁より事後に「労災隠し」と認定される事もありました。
ただ、本来であれば手数料と言う名の借金は、とてもおかしな事ですが、これは日本国外で起こっている事であり、私たちの様な監理団体が個々に注意をしていく以外に方法がなく、根本的な解決は難しいと思います。
これは残念ながら、新しい制度である「特定技能制度」でも、一部の国では仕組みが改善されていない事もあり、同様の問題は起こり続けていくと思われます。

前編の記事はコチラですので合わせて御覧ください

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